尾鷲市の自治体を悪く言わないで! 〜医師獲得に東奔西走するチャーミングな市長〜

 みなさんもご存知だと思いますが、三重県尾鷲市紀伊半島の南部にあり陸の孤島としてつとに有名です。そのせいかこの地には一時期産婦人科医がいなかったのですが、なんと5000万円を超える俸給で雇うことに成功。ところが交渉が決裂して今季限りで辞職されるらしく、またまた産科医不在に逆戻り。この交渉について、賃金を値切ったり市議が暴言を吐いたりして、せっかく地域のお産に貢献した産科医がかわいそう…などとアングリーな医師たちがブログで大批判。(「ある産婦人科のひとりごと」よりニュースのまとめ

 どんな方々がこの献身的な産科医に暴言を…わなわな震える手でマウスを操り尾鷲市をグーグル検索。市のページをのぞいてみると、市長はじめ、市議の皆さんのご尊顔を拝す事ができました。中にはスター・ウォーズヨーダを想起させるような(雰囲気であって決して見た目ではありません…)方もおられて、まさにこれはジェダイ評議会みたいなもので、主に様々な惑星系からやってきた生物たちの間で言語が上手く通じないせいで議論がまとまらないのでは…と妙に納得しそうになったり。

濱口委員
提示の4800万円は3倍以上だ。他の医師がむくれるのも当たり前であり、市長のやることは後手後手だ。こんなことでは他の医師が三重大に帰ってしまう。もっと早く議会に基本的な考えを示すべきだった。6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。4800万円を出すこと自体が話にならない。
医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれもしなかった。仮に3千万円で医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくるという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話がいろいろ入ってくる。第一に他の医師が納得できる額が求められるのに話にならない高額だ。

 このように困った発言をされているわけなのですが、実際にこの方のお顔を見てみると、なかなか憎んだり出来ないもので…というか、逆に応援したくなるという不思議な感情の芽生えが…。市長の恰幅のよさとパーマネントのかかり具合は、尾鷲市の食べ物の美味しさと美容師さんの高い技術力を象徴しているようですし、濱口議員のいけずな発言(「新小児科医のつぶやき」より)も、ただ単に市長にイジワルしたいだけなのかもしれませんが、もしかしたら出掛けに、議員が蒐集した怪しいお宝グッズ(マリリン・モンローが来日した際に捨てて帰ったと言われるストッキングなど)を、奥さんにゴミ呼ばわりされて虫の居所でも悪かったせいなのかな…と許せたりもします。濱口議員は監査役なので一般市民が考えそうなナイーブな疑問をぶつける憎まれ役に徹したと考えることもできそう。それよりも尾鷲市の人口は2万人ちょいなのに6万3千もの署名は一体どこから…背筋がゾクッとする疑問です。


 それにしても、赴任された産科の先生…お疲れ様でした。


 

 何が問題なのかよく考えてみると、尾鷲市には高速道路も走っておらず、僻地すぎるのが諸悪の根源なのです。特にまた紀伊半島の出っ張りが尋常ではないせいか、三重の中心部から離れすぎています。それ以前に、日本列島が全体的にデコボコしすぎている…という日本の地形自体に抗議したい部分もあります。場所は離れていますが特に三陸海岸のギザギザっぷりなどは噴飯物です。まあ、あの辺りで採れる海産物はとても美味しいですので実際はわざわざ口に入れたのにみすみす吹き出してしまうような勿体ない事はしないのですが…

 V6におけるイノッチ(まぶたが一重の人は第一印象で損をしがち)のように、尾鷲市は生まれつきハンデを背負った土地柄なわけですから、温かく見守って行きたいと思います。この土地で新しい僻地医療の様式が生まれるといいな…と固唾を呑んで見守りたいです。尾鷲市のように地域で医療のことを考えて試行錯誤することはとても評価すべきことですし、全国の同じ悩みを抱える僻地の自治体からの視線も熱く、それらにとってモデル的存在になれば良いのに…

 どちらにせよ今の交通事情では近辺の基幹病院までのアクセスが不安ですので、このまま一人産科医を獲得しても、万が一の搬送などは困難…綱渡りが続くのではないでしょうか。離島みたいにヘリコプターなどでの搬送は非現実的なのでしょうか? そもそもたった一人でも産婦人科をおく必要があるのでしょうか? 疑問は色々あるのですがニュースではそういった通好みの情報が皆無なので仕方ないです。

 変に陸続きだと逆に交通の面でもインフラを整備したりと色々大変だな…と思います。近畿自動車道紀勢線が開通すればもう少し楽になると思うのですが、やたらと税金の無駄&環境に悪い&道路族は国賊というロジックで高速道路を毛嫌いする方々もいるので全国的な世論の盛り上がりは難しそう。地域医療は地域で考えていくべき事なんでしょう…