2.18

 我々は福島事件で逮捕された産婦人科医の無実を信じ支援します。

 「もしあの時、ああしておけば良かったかも…」

 自己の治療行為を振り返っては頭の中で再現したり、他の選択枝をシミュレーションすること。どのような医療従事者であれ、よりよい医療を行おうと考える者は、常に自分の行った治療行為の是非について自問自答を繰り返しています。治療に難渋している患者さんの場合だけでなく、どんなに些細な日常的な診療においてもいくつかの選択枝から一つを選んだ後は、このフィードバックを常に行います。逆にそれが出来ない者は医師として失格であると言えましょう。医学はその「振り返り」の積み重ねによって成り立っており、現代の医療行為に反映されています。

 もちろん今回の件においても「振り返り」は必要です。すなわち、「ああすればよかった。こうすれば助かったかもしれない」の議論は、私たち医療従事者をはじめ、医療行政に関わる者すべてをも巻き込んで、専門家、直接の当事者の手により活発になされるべきですし、浮かび上がった問題点はそれぞれの当事者たちが今後の教訓として引き受けるべきでしょう。

 しかし、福島の産婦人科医の先生一人の「振り返り」を罪の証拠であると曲解し、この複雑な要因の積み重ねにより、避けようが無く発生した件のすべての責任を負わせてしまおうとするこの裁判は、事件の本質には届かないであろう点において、明らかに不毛であり、茶番であるとも言えます。今後、産婦人科医の先生には指摘できるような過失が無かった事が、疑いの余地がない形で証明される事を私たちは信じております。

 私たちにできる事は、おそらく何度も何度も頭の中で「振り返った」であろうこの先生に、ともすれば自責に苛まれたであろうこの先生に、「先生は間違っていない」とゆるぎない自信を持って何度もメッセージを送り続けること。そして、産婦人科の先生がたった一人でこの事件を引き受けるという事態を引き起こし、不毛な司法の土俵にやすやすと引渡してしまった私たち医師一人一人も反省し、今後は私達全員で引き受けてゆこうという覚悟を据えること。支援するというのはこういうことなのでしょう。

 

 ■ 私の福島事件に関する意見

 妊婦さんを救おう! 〜産科医療をぶっこわせ2006〜

 ■ 福島事件に憤った人は沢山います

 新小児科医のつぶやき 2.18