ラッキーおじさん

 予定日を3日過ぎたんだけど、子供が生まれる気配ゼロ。こういうのは突然来るのかしら…柄にもなくソワソワしてしまって、自分でもみっともないと思う今日この頃。どんな心境かというと、上手く表現しづらいのだけど、クリスマスのようなほんのりと楽しい雰囲気のイベントをただ待ってるような感じ。窓の外を眺めながら給食時間を待ってる阿呆の児童のようでもある。痛いのか辛いのか私には想像も出来ない出産を控えた妻には悪いけど…

 ただ、よーく考えてみると、子供が生まれるからと言って、私が別に何に貢献したということもないんだわ。何だろうなあ。10ヶ月まえに妻の××に××した××が××したというだけ…。このあたり、ちょっと若い人に伝えたいのですけれども、避妊とかちゃんとしないと子供って思ったより簡単に出来ちゃう事もあるので要注意。私自身びっくりしたよ。そんなわけで、私、ちっとも偉くない。ただのラッキーなオッサンに過ぎない。

 そもそも、子供が生まれて親になるなんて、そこかしこで起こっている出来事なわけで別に珍しくも何ともない。まあ、うちの子供が生まれた瞬間に全世界がまばゆい光に包まれて、ありとあらゆる紛争が平和的解決を迎えたり、うちの子供そのものが環境問題をたちどころに解消するようなクリーンな第4のエネルギー資源だったり、全身に施されたため息の出るような美しい螺鈿の細工のために生直後に正倉院に収められたりすると、「ほう、お前がこの子の親か」と褒められたりするかもしれないけど、まあエコーの写真を見た限り今の所哀れな二足歩行のクリーチャーっぽい。たぶん私の子供だから、私に似てうだつが上がらないのでしょう。とっても不憫。不憫だからこそ余計に可愛い。まだ生まれてないのに…

 研究室に到着して、携帯電話を持ってきていない事に気がついて、妻の携帯に「変わりないかね」とメールしたら「お腹の中でゴソゴソしているけど、全然変わりないよ」と返事。私と妻のどちらかに似てるのかも…可能な限りグズグズするタイプだと思う。この性質は本当に損するので生まれてきたら叩きなおしたい。まあ、母児ともに問題ないのなら、焦って生まれてくる必要なんて無いとも思う。生きるのもそれなりに大変なんだよ。最近なんとなく気付いてきたよ。それよりお腹の中でゴロゴロしてるほうがよっぽど幸せそうな気がするけど…一回出てきたら、もう帰れないし…悩むところだよね。その気持ちよくわかるよ…でもまあ、もうそろそろ出てきてもいいんじゃないかしら、とラッキーなオッサンである私は無責任にもそう思ってる。