私の可愛い息子を返してください!

 ちょっと一ヶ月ばかり見ない間によく喋るようになっている。「たまごやき」とか、「お父さん飛んでった」とか、「がんばって…」とか電話で言う。電話の向こうに誰かいるのがわかるようになっているので私の話に返事をする。それから歌まで歌っている。ぶんぶんぶん、ハチが飛ぶーの歌とか、キラキラひかるお空の星よーとか、電話の向こうで歌っている。「twinkle, twinkle」バージョンは、「ちんこー、ちんこー」と幼児風にアレンジされている。嬉しい反面、ちょっと前の何か一生懸命喋ってるけど何言ってるのかさっぱりわからないときの方が可愛かったかもしれないとも思う。こちらに来た時は息子の顔が見たくて仕方がなかったけれど、これだけ会わないでいると、私のほうでもずいぶんと息子の事など忘れがちになってしまい、それに慣れてしまった。一人暮らしをしていると独身時代に戻ってしまったようにも錯覚し、まるで私はいつの間に父親になってしまったのだろうかと思うくらいである。