転んでも骨が折れなくなるクスリがあるといいなあ

 まあ私みたいな未熟な医者が言うとおこがましいかも知れないのだけど、このバイト病院に4年も勤務していると、トータルで200件くらいはこの近辺に住む年寄りの大腿骨の頚部骨折の手術を行ってきた事になるわけで、よく考えてみると結構地域医療に貢献しているような気になる。手術件数を重ねると以前左側を骨折して私が手術した患者さんが今度は右側を骨折して入院してたりする。あーあの時の…まあ元気で暮らしておられたようで嬉しい。で、ある人は90歳半ばの婆さんなんだけど、前回転倒して頚部骨折した時は、年も年だしこれを機会に寝たきりになる可能性も高いという意味で、近所の連中は「もうあの人も終わりかもわからんね…」と口々に噂していたとの事。ところが手術を終えて2、3ヶ月してまた近所をウロウロ歩き始めたものだから、どこの名医に手術をしてもらったの!?…とうちの病院はたいそうな評判になったらしい。そんなわけで、この婆さんは歩く広告搭としてうちの病院ではとても大切に扱われているのだけれど、先月にこんどは反対側を骨折して入院したの。まあひどい骨折ではなく、手術後も順調でもうじき退院する予定。手押し車を押して院内をおぼつかない足取りで歩いている。今回も外をウロウロできるようになるかはわからないけれど、他の年寄りと比べても回復が異常に早い。時々このように生命力の高い患者さんに出会い元気に退院されると私の方が元気づけられるというものです。