ノーフューチャー大学病院

 もうね、この年末あたりにうちの大学病院がある日忽然と消えて無くならないかなーと思ってる。漂流教室みたいに…しかも、医局も教室だからつじつまが合ってるし。そんで医局スタッフの皆さんには彼の地で未来オニヒトデと格闘してもらいたい。

 入局者減少のあおりを受けて、1月から3月まで無給で大学病院の病棟勤務という罰ゲームをくらった私たち大学院生なのですが、そんなにも医局員が足らないなら、うちの医局は関連病院をガンガン手放したらいいのにと思うのです。これも結局、関連病院の部長にヤイヤイ言われて負けてしまい、ニューカマーとしての最下層の働きバチを全部奪われた結果なのです。こっちは大学院生もタダ働きさせて、ギリギリなんですわ…という対外的なアピールに過ぎないのです。

 病院の診療科が減ると地域住民が困るとかいうのは本当はどうでもよくて、昭和末期あたり卒の連中の職場を確保するために、部長のポストを減らせないから関連病院を手放せないのかしらとも思う。そら、中堅や研修医はどこも不足してるわけだから、今の部長世代がどんどん開業するか、いくつかの病院に集まってしまえば関連病院が減って、そのぶん各病院のスタッフが充足していいじゃないかと思う。たぶんそんな事にはならないのでしょう。逆にそのちょっと下の中堅以上ベテラン未満は早いところドロッポしたがる傾向にあるわけだし、こんな状況にあってはなおの事その傾向は進むと思う。さらにノーフューチャーで不貞腐れた顔で働くスタッフの姿を目の当たりにすると、ローテーターたちはなおさら入局したがらないという悪循環ですよ。医局が崩壊とか何とか言う前に縮小しろと私は言いたいのですが、誰も本気で医局をどうにかしようなどとは考えてないに決まってるのです。まあ、ほんとはどうでも良いんですけれど…

 で、先日、申し送りに行ってきたのさ。何かちょっとした説明会という感じで、サマリーは2週間以内に書いて病歴にカルテを下ろしてくださいとか、病床稼働率100%をキープしたいので退院日は勝手に決めずに看護師長と相談してくださいとかナントカカントカ…あーあったね! そういうの! で、病棟のニオイとかナースコールの際に詰め所に響き渡る電子音のメロディーを聞いて、なんかもうひたすら勤務が面倒くさかった研修医一年目の当時がフラッシュバックして、あらためて気分がどんより。で、まあよく言われているのが、看護師さんが相変わらず働かないとか言うのもありますけれど、まあ、それはあんまり関係ない。一年目のとき、採血は研修医の仕事だったけれど、時々看護師さんがどんくさい私を特別に助けてくれていたので悪感情は特にないのです。

 まああの時は若かったし何となく将来に希望のようなものがあったような気がする。なんでも不要なプロセスでゴテゴテした効率の悪い病棟業務や、何でも面倒くさいことをペーペーの研修医に押し付ける医局の常勤スタッフの尊大さについても、期間限定では余裕で我慢できたし、苦い青春の一ページとして捉えることもやぶさかではなかったよ。まあ、あれは理不尽な状況で研修医をさんざん痛めつけて、体力や気力が折れてしまうような弱く使い物にならない研修医や、正論を振りかざして上司に楯突くような扱いにくい危険分子をふるいわけるようなシステムだと考えれば、まあそれはそれで昔はアリだったのかなと思うけど、これからの時代にはきっとそぐわない。

 まあもう私医者になって7年…シャレで病棟勤務なんて出来ないですわ。だからもう心をただひたすら無にして勤務したいと思うわけですけれども、ホラ、なんていうの、綺麗な看護師さんとかいると日々の勤務に潤いがあっていいなーと、一年目だったらそう思ったりしても許される気がするけれど、まあ、もう私は妻子持ちのオッサンなのでもうそういうのも無いだろうと思うと寂しいわけです。