身代わりになりたいのはやまやまだけれど…

 私がけしかけた精鋭たち(よその男のだったらどうしよう!)の一匹が妻の卵にビンゴしたらしく、今まさに妻はつわりingなのですが、なんか「気持ち悪い…」といいつつ、お菓子ばっかり食ってるんだけど大丈夫なのかしら…産婦人科の先生によると、いま8週くらいらしい。おお…今度は無事に成長しておくれ…

 受精に際して卵と精子が出会うと、両者が相互に応答して、それぞれが受精という生命誕生のドラマにふさわしい大きな変化をおこす。精子先端部で起こる劇的な変化が先体反応である。精子が卵のジェリー層に含まれる先体反応誘起物質による刺激を受けると、精子頭部の先端にある袋(先体胞)が崩壊し…

 さっき読んで初めて知ったのだけれども、精子が受精した際に先体から突起を伸ばすみたいで、そのメカニズムとして精子の持つアクチン分子がおもむろに重合しておこるフィラメント形成が寄与してるらしいんだって…

 この本は今年の7月に出た、サイエンス社生命科学ライブラリシリーズの一冊で、「細胞運動」という生命現象について一通り紹介した本なのですが、非常に読みやすい本でなのでご紹介。「いまさら英語のレビューを探すのも面倒…基本だけ押さえたいのに!」なんていうわがままな臨床メインの御仁にも、生命科学系の学生さんにもお勧めの書籍です。よくある日本語レビュー本にありがちな、まだ評価の定まらない最新の論文紹介に終始して、結局、何が重要なのかわかりづらくなった構成と異なり、アクチンとミオシンについて、初期の筋肉の研究によって積み重ねられた知見からていねいに紹介しているので、非常に理解しやすい形に仕上がっています。

 初出の用語もきちんと説明してくれますし、途中で細胞運動を観察する実験材料である真性粘菌のフィザルムが出てくるのですが…「オートミールを餌にして、バケツなどの湿った容器で簡単かつ大量に飼育できる。」という具合にさりげない説明を盛り込んでくれるので、「ほう、バケツで…何と不憫な生き物よ」などと、初めて耳にした生物にも親近感が湧くというフレンドリーな仕上がりです。最後の方にはチェックが甘かったのか、見てすぐわかる単純な書き間違いなどが出てくるものの、「細胞運動の面白さ」を読者に伝えようとする著者の愛を感じてしまい恍惚…かといってトロポニン、トロポミオシンのマニアックな制御メカニズムについても触れておりますので、読み応えは十分なのです! 一度原点に立ち返って頭を整理するにはもってこいなので、ぜひ大学の図書館などで借りて読まれると良いかも。

 えーと…何の話だったっけ…こんなところで妻の妊娠にかこつけて細胞生物学の新刊本を紹介しても誰も読まないと思う…

 そうそう、妻はつわりが辛いときは早めに家に帰ってきてゆっくりしているようなんですが、「つわりの気持ち悪さをまぎらわせるための便利グッズ」と称してラボの大学院生から「あずみ」を39巻まで借りてきて読んでる。もう連載10年目くらいらしくて、昔スペリオールで読んでた学生の頃を思い出します。印象深いエピソードはあずみの暗殺を目論む「きく」がいつの間にかあずみの魅力に惹かれて……というアレ。「あずみ15巻(副題:きく無惨)」は何度も声に出して読みたいマンガだよね!…などと絶賛してみたところ、妻が言うには「母親は”野武士が斬り殺されるマンガなんて残虐すぎ…胎教に悪いから読んじゃだめ!”と私と子供の体をいたわってくれたのに、アンタにはそういう発想はないの?」 うわ! なぜか私が悪いみたいに! 機嫌が悪いときには近寄らないほうがよさそう…

あずみ (15) (ビッグコミックス)

あずみ (15) (ビッグコミックス)

 あと妻がバイト先の看護師さんからデスノートも借りて来てたんだけど(アチコチでマンガ借りすぎ)、セリフが冗長すぎてあまり楽しめなかったのですが、年のせいかしら…「あんなネットリした展開が好きな今のヤングな連中は性生活においても、意外としつこいくらい濃密な前戯を繰り広げてるのかしら…キラ役としては藤原君は顔面がモルワイデ図法みたく横に広すぎるような…むしろ”じゃりン子チエ”のヒラメちゃん役に抜擢されるべき」などと持論を展開してみせたら、「うう、アンタが家に帰ってきたらよけい気持ち悪い…」などというショッキングな展開。早く悪霊から解放されて正気に戻って欲しい…